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科学理論は決してほんとうに真であると証明されることはない(レン・フィッシャー著「魂の重さは何グラム?」より) 玖月最初の日記 2011/09/01(Thu.)
 本日は学童は新学期の初日である。
上りの電車はスーツで混み合っていて、下りは制服が一車両に十人くらい
乗り合い、示し合わせたように同じ駅で一斉に降りた。

今日は「一日家を空ける」という消極的な用事の為に出掛けた。朝の六時
に家を出、駅について時計を見て、さあ今日は夕方の六時までは家に戻ら
ないぞ、と心に決めた。丸半日、暇を潰す手段を私は持ちあわせていた
だろうか。


(午前六時、三鷹市内某所にて。昨夜の雨の後で空が真っ赤に染まっていた。
携帯のカメラで撮った写真であるが、実際にはもっともっと5割増くらいで
赤かったのだ)

私の行動範囲なんてたかが知れてる。吉祥寺か、大学である。大学で何を
するかとすれば、学食で安くお昼を食べるか(これは牛丼屋で代替できる)
、本を読むのに生協の書籍部に行くか(図書館よりも便利)だ。実際全て
吉祥寺のお店で代用できるものであって、わざわざ大学まで行くのは、
もしかすれば知人に会えるかもと期待するからだ。それで会うことは滅多
に無い。

井の頭線に乗って、私は延々と往復し続けるつもりだった。普通列車なら
片道30分。朝のこの時間は二本に一本、終点まで行かず途中駅で終わる
列車がある。そういう時は一つずらせば、始点から終点まで走り、そして
往復し続けることができる。それに乗れば何時間寝ていようが誰も起こしたり
はしない。
 駅に降りると午前九時、三往復くらいしたのだろう。吉祥寺にはほとんど
人が居なくて、店もほとんど開いていない。こういう時に開いているのは
大きなチェーン店だけなのだ。やはりほとんど人の居ないファーストフード店
を喫茶店代わりにしてコーヒーで一時間粘った。ソファの席を選んだが
それでも私には固かった。映画館でぐっすりと寝たかった。2時間で1500円とは
暗く快適な空間でふかふかの椅子に座ってられる場所代なのだ。

吉祥寺には映画館が二つある。小さいが近い方を見てみたが面白そうなのが
やっていない。駅の方に戻ってもう一つを見た。コクリコ坂はもう二回見た
のでハリー・ポッターを見ることにした。3Dのしかやってない。一次元増す
のにプラス300円、その一次元を補足するメガネに100円余分に掛かった。
できれば2Dが良かったが、偶然にも今日は朔日で基本が1000円だったので、
まあよし。チケットを買ってる丁度そのタイミングで今映画が始まったので
次の上映のチケットを買うよう勧められ、二時間また暇を潰さなければ
いけなくなった。

どこの店も節電と言いながら、それでも私にはクーラーが効き過ぎていて、
(やはりまだ半袖を着る季節ではなかった)どの店にも長居できる自信は
無い。松屋で七味を少し後悔するくらい掛けて食べた。それで少し暖かく
なった。

私もいくらかは傍若無人に振る舞えるようになった。昔の自分に較べれば
である。元々が気が弱すぎたので、これでもまだまだ人並み以下である
と思っている。例えばお店に行けばお金を払ってる立場として当然の
サービスを要求することに躊躇いがなくなってきた。店員と客という
社会的な役を演じるというのは気がラクだ。どちらかがボスで、どちらか
が奴隷である。対等な立場なんてものは非常に不安定である。それは
シーソーの両端に二人が乗って水平を保つようなものである。こんな
私は良市民になれるだろうか。法律をただの一つも犯さずに天寿を全う
するなんてことは、いったい可能なのだろうか。

スタッフロールまで見ていて、いつの間にか寝てしまった。目が覚めると
映画の半分目くらいのシーンが流れていた。時間が戻ったわけでは
あるまい。ほとんどすぐに理解した。この映画館では、その階ではその
映画が流れ続けるのだ。もちろん映画と映画の間にニ、三十分のインターバル
はあるだろうが、その間私は寝続けていたらしい。状況を理解したその後も
まァ、途中で映画館を抜け出すのもアレだから、と映画を見続けようと
思ったがまたすぐにトロトロと寝てしまった。今度は誰かに肩を揺すぶられ
目が覚めた。スクリーンは真っ暗で、館内は少し明るい。振り返ると
客が数名、映画館を出ようと歩いてただけだから、あの中の誰かが
親切にも起こしてくれたのだろう。



中途半端に眠くなったがもう出なければいけない。予定の午後六時は
とっくに過ぎている。寝起きは口の中が気持ち悪くて、きっと雑菌が
どうこうと言うのだろう。口に生卵を含んでるよう、という形容が
私は気に入っている。この状態で今から家に帰ることを考えると
ウンザリした気分でいて、今、吉祥寺のシャワー付きのネットカフェ
でいる。初めからここに来れば良かった。

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