intime o'

手前に何かを軽蔑する権利なんかあるもんか(阿佐田哲也著「麻雀放浪記(一)」より)
アンドロイド党のはなし 2011/10/02(Sun.)
「服って、どうしてこんなに高いんだろうなあ!」
と怒ったように言いながら、手にはワイシャツやらズボンやらを抱えて
帰宅してきた。この人は一体、いままで服を自分で買ったことがなかった
のだろうか。
「ほら見ろよ。たかがこんなシャツ一枚が1000円だとよ!」
と値札を私に見せてきた。
「誰かがズルをしてるに違いないんです」
「誰かって誰だ。政治家か?やっぱり文系の仕業だな」
「そりゃ分かりません。政治家もそうかもしれませんけれど、
服に関して言えば、服を原料から作る所からからお店に並べる所までの
過程の中に、そいつが一つ咬んでるはずでしょう。」
「つまり、金儲けをしてるやつだな」
「ええ、そうです。そのとおりなんです」
私たちは床に直接座ってハサミで値札を切り取りながらこんな会話を
していた。私はハサミで有付さんを指してしまって「やめろ」と怒られた。
「一番お金を貯めてるヤツが犯人です。仮にコイツを犯人エックスと
しましょう。エックスの定義は、お金をやたらと貯めてるヤツ、です。
『やたらと』という表現については、必要に迫られたら厳密に考えましょう」

「もう少ししたら、」有付さんは服を綺麗に畳もせずソファの上に積み重ねて
言った。「アンドロイドはネコくらいの脳に追いつく。本当にもうすぐだ」
「そうかなあ。じゃ今はどんな動物の脳みそなの?」
有付さんは質問に答えずに続けた。
「アンドロイドは人の役に立つのが役目だ。これは間違いないね」
「そうだね」
「役に立つとはつまり、どういうことか。人間の仕事を奪うということだ」
「失業率はうなぎのぼりだ」
「失業率という言葉は、今の社会では難しいよ。働きたくても働けないのか、
それとも働かなくてもそんな必要がないのか。Xはどう思うかな」
「Xは、ここではきっとアンドロイドを設計・製造・販売・修理する奴らだね」
「必要なのは金だ。服を買うのにこんな金が必要なんじゃあ、国民は
みんなアンドロイドを作らないといけない。自分のロボットくらい自分で作って
修理しないといけない」
「アンドロイドを作る役目はロボットだ」
「アンドロイドを作るのにも金がかかる」

コメ(0) | トラ(0)