日記「芦」

人生に必要なのは何か?─『珈琲時間(豊田徹也作)』より あまのじゃくになって、その後 - 小説 2010/09/23(Thu.)
『あまのじゃくになって、その後』
大家に言ってアパートの部屋の鍵を開けてもらった。
男性の一人暮らしとしては随分と片付けてあったが全てのものに薄く
埃が被ってあった。
机の上には学校で使っていたのであろう教科書とノートパソコンと、
そしてすぐに目がつくのは一枚の紙切れであった。ノートパソコンから
ケーブルで繋がった黒い大きなマウスが重し代わりにその紙切れの上部
に乗せてあった。
紙切れにはこう書いてある。

いつからか、周りの視線が冷ややかだったり厳しいものになったりした。
恐らく中学生の頃からそれは始まっていた。高校に通うようになって
単に自分が慣れたためか分からないが気にならなくなったが、大学生の
今、それがまた始まって随分と苦しい生活である。

今はまだ夏季の長期休暇であるので、ほとんどいつも一人で家から出ない
生活をしている。二学期が始まって学校に行けるか、その自信が無い。
家に篭った生活は楽ではない。ただ目の前の困難を避けているだけで
それはいいが別の精神的な苦しみもある。だから深夜の散歩が大変楽しみ
なのだ。やはり家の中の空気と外の空気は全く違う。体が浄化されるよう
な気分である。家の中の空気は所詮、作り物の綺麗さだ。自然によって
ろ過された外の空気のような美味しさがない。

これが遺書だと思われた。[EOF]


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