日記「芦」
純粋数学ほど役に立たぬものはあるまい。 - 『数学者の言葉では』(藤原正彦著) sin,cosについて - 数学 2010/09/28(Tue.)昔のサイトからのサルベージ 2009-07-04 知識角の定義 [図1]の半径rの円における扇形(太線)において、 弧の長さがlとなるような扇の中心角を
θ=l/r
と定義する。 θは長さを長さで割ったものなので無次元であるが、 角度であることを言う為に[rad](ラジアン)という単位をつけることがある。 相当、という意味で"〜"という符号を使えば 例えば、0[rad]〜0°、π[rad]〜180°である。 但し両辺は違う次元であるのでイコール("=")で結ぶのはいささか気が引ける。 三角関数 [図2]の直角三角形のように、長さをa,b,r、角度θを設定した時(0<θ<π/2)、 三角比cosθ=a/r sinθ=b/r
を定義する。 今、θは有限の範囲を取る実数であるが、実数全域をとるように 拡大する三角関数を次のように定義する。 [図3]のxy座標で、原点を中心として半径rの円周上を自由に動く点Pについて θ=∠POAとすると 点Pの座標について(x,y) := (r・cosθ, r・sinθ)
と定義する。 通常は半径r=1の単位円で考える。 基本的性質sin
(1)の両辺をcos2θで割れば、θ+cos
θ=1 ---(1) tanθ=sinθ/cosθ ---(2)
tan
従って、sinθ,cosθは[-1,1]内の実数、tanθは実数全域を取る。 sinθ、cosθは周期2πの周期関数。θ+1=1/cos
θ ---(3)
sin(θ+2π)=sinθ ---(4) cos(θ+2π)=cosθ ---(5)
sin(x)とcos(x)はずれており
sin(x+π/2) = cos(x) ---(6)
cos(x)は偶関数cos(x) = cos(-x) ---(7)
sin(x)は奇関数sin(-x) = -sin(x) ---(8)
加法定理 幾何学的関係からsin(α+β) = sinα・cosβ+sinβ・cosα βの代わりに-βを入れ、(7)と(8)から sin(α-β) = sinα・cosβ-sinβ・cosα
この二式を纏めるとsin(α士β) = sinα・cosβ士sinβ・cosα ---(9)
また、cos(α+β) = cosα・cosβ-sinα・cosβ βの代わりに-βを入れ、(7)と(8)から cos(α-β) = cosα・cosβ+sinα・cosβ
この二式を纏めるとcos(α士β) = cosα・cosβ干sinα・sinβ ---(10)
また、tan(α士β) = {tanα士tanβ}/{1干tanα・tanβ} ---(11)
加法定理は基本事項の中の最も重要な事項である。以下では、断り無く用いる。二倍角の公式 (9)の複号の上の式でα=βを用いればsin2α = 2sinα・cosα ---(12)
(10)の複号の上の式でα=βを用いればcos2α = cos
これに(1)を用いるとα-sin
α ---(13)
cos2α = 2cos
半角の公式 (14)のcos2α = 1-2sin2α にA=2αを代入するとα-1 = 1-2sin
α ---(14)
cosA = 1-2sin
(14)のcos2α = 2cos2α-1 にA=2αを代入すると(A/2) ⇔ sin
(A/2) = (1-cosA)/2 ---(15)
cosA = 2cos
三倍角の公式(A/2)-1 ⇔ cos
(A/2) = (1+cosA)/2 ---(16)
sin3α = sin(2α+α) = sin2α・cosα+cos2α・sinα = 2sinα・cosα・cosα+(1-2sin
α)・sinα = 2sinα(1-sin
α+1-2sin
α) = 3sinα-4sin3α ---(17)
cos3α = cos(2α+α) = cos2α・cosα-sin2α・sinα = (2cos
和積の交換α-1)cosα-2sin
αcosα = (2cos
α-1-2(1-cos
α))cosα = 4cos3α-3cosα ---(18)
この小章では A=α+β, B=α-β とする。
(9)の複号の上の式と下の式を足せばsin(α+β)+sin(α-β) = 2sinα・cosβ ---(19) ⇔ sinA+sinB = 2sin{(A+B)/2}・cos{(A-B)/2} ---(20)
(10)の複号の上の式と下の式を足してcos(α+β)+cos(α-β) = 2cosα・cosβ ---(21) ⇔ cosA+cosB = 2cos{(A+B)/2}・cos{(A-B)/2} ---(22)
(10)の複号の下の式から上の式を引いてcos(α-β)-cos(α+β) = 2cosα・sinβ ---(23) ⇔ cosB-cosA = 2sin{(A+B)/2}・sin{(A-B)/2} ---(24)
sinとcosの交換 (6)よりsin(x+π/2) = cos(x)
であるが、x→x-π/2の変数変換を施すとsin(x) = cos(x-π/2)
cos(x)は偶関数であり、cosθ=cos(-θ)であることからsin(x) = cos(π/2-x) ---(25)
また、x→π/2-xの変数変換をするとsin(π/2-x) = cos(x) ---(16)
このように、パラメータ(引数)を変更することで、sin,cosをcos,sinに単純に変換することができる。 三角関数の合成 直角の挟辺がa,bとなるような直角三角形を考える。 辺aの隣の2角の内、直角でない方の角をαとする。(0<α<π/2) この時cosα = a/√(a
となるから、+b
), sinα = b/√(a
+b
)
a・sin(x)+b・cos(x) = √(a
同様にして、+b
) cosα・sin(x)+√(a
+b
) sinα・cos(x) = √(a
+b
)・sin(x+α) ---(27)
a・sin(x)+b・cos(x) = √(a
とできるβはどのようなものか。 三角数を含む方程式 #sin(x)=0 ⇔ x=nπ(nは整数) #cos(x)=0 ⇔ x=π/2+nπ(nは整数) #sin(x)=1 ⇔ x=π/2+2nπ(nは整数) #cos(x)=1 ⇔ x=2nπ(nは整数) #sin(x)+sin(y)=0 ⇔ 2sin{(x+y)/2}・cos{(x-y)/2}=0 ∴sin{(x+y)/2}=0またはcos{(x-y)/2}=0 ⇔ (x+y)=2nπまたは(x-y)=(2n+1)π ⇔ y = -x+2nπ または y = x-(2n+1)π (但しnは整数) #a・sin(x)+b・cos(x)=0 ⇔√(a+b
)・cos(x+β) ---(27')
+b
)・sin(x+α)=0 (ただし、αはtanα=b/aを満たす) ∴sin(x+α)=0 ⇔x=nπ-α =nπ-tan-1(b/a) 極限 右図4のような扇とそれに内接する二等辺三角形、外接する直角三角形を考える。
内接する二等辺三角形の面積 S1 扇の面積 S2 外接する直角三角形の面積 S3 は
S1 < S2 < S3
を満たすのは図より明らか。S1 =
(28)より 0<θ<r・a S2 =
r・b S3 =
r・c a = r・sinθ b = rθ c = r・tanθ ∴ sinθ<θ<tanθ (0<θ<
) ---(28)
について sinθ<θ⇔sinθ/θ<1 θ<tanθ⇔cosθ<sinθ/θ ∴cosθ<sinθ/θ<1 θ→0に飛ばす時、cosθ→1なので挟み撃ちによって
sinθ/θ→1 (θ→0) ---(29)
また(28)より 0<θ<について θ<tanθ⇔1<tanθ/θ sinθ<θ⇔tanθ/θ<1/cosθ ∴1<tanθ/θ<1/cosθ θ→0に飛ばす時、1/cosθ→1なので挟み撃ちによって
tanθ/θ→1 (θ→0) ---(30)
微分 {sin(x+h)-sin(x)}/h = {sin(x)・cos(h)+sin(h)・cos(x)-sin(x)}/h = {sin(x)・(cos(h)-1)+cos(x)・sin(h)}/h = sin(x)・(cos(h)-1)/h + cos(x)・sin(h)/h → 0+cos(x)・1 = cos(x) (h→0の時) (∵(29)を用いた) 微分の定義を思い出せば上の極限の式はつまり{sin(x)}' = cos(x) ---(31)
更に、(26)を用いれば {cos(x)}' = {sin(π/2-x)}' = -cos(π/2-x) = -sin(x){cos(x)}' = -sin(x) ---(32)
(31)と(32)を使えば{tan(x)}' = 1/cos2(x)
テイラー展開 x~0の周りでのテイラー展開 f(x)~f(0)+f'(0)・x+f"(0)・x2/2!+ … +f(n)(0)・xn/n!+ … を用いればsin(x)~x-x3/3!+x5/5!-x7/7!+ … ---(33) cos(x)~1-x2/2!+x4/4!-x6/6!+ … ---(34)
|x|が十分小さければxの二次以上を無視して sin(x)≒x ---(35) cos(x)≒1 ---(36)
積分![]()
○例題
部分積分 {f(x)g(x)}'=f'(x)g(x)+f(x)g'(x) ⇔ ∫f'(x)g(x) = f(x)g(x)-∫f(x)g'(x)dx を繰り返し用いれば f(x)がn次以下の整式の時、
sinθ1やcosθ2が混在する式は 和積変換の公式により和に直せば積分計算が楽になる。 更に積分結果がA・sinθ1+B・cosθ1+C・sinθ2+D・cosθ2 になることを期待して、 コレを微分してABCDを求めてもよい。
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