「よくまあここまで来れたものだね.一人で来たんだよね」 「はい.初めて来た場所だったので.いえ行き慣れたところなら 信号だって上手く回避して行く事ができるのですが、坂を登った こちら方面には初めて来たので、二度くらい車に轢かれそうになりました」 私にはまだ冗談を言う気力が残っていた. 「しかしこれはすぐにでも手術をしないといけないよ、きみ. 手術は受けるんだよね?受けずに更に矯正するか訓練を受けるかとか 別な手立てもあるけれど、、医者としては手術を勧めるべきだと 思う.もうここまで酷くなっていてはね.」 「はぁ、そうですか」 「そうですかじゃないよ.受けるんだね?」 「お医者さんがそういうのなら、そうしないといけないのでしょうね」 「じゃあまず検査入院.なのだけど、今はゴールデンウィーク明けで 受付も入院部屋も満員なんだ.一週間後にまた来て」 と言われ追い出されてしまった.緊急に手術を勧めるくせに一週間も 放ったらかしにされるなんてなんという病院だ.他の病院も当たったほうが いいのだろうか.私は住所と電話番号を書いてまたふらふらしながら帰った. 電話がかかってきたのはその二日後で、送迎のミニバスをよこそうかという 誘いを断って、また自分で歩いて病院に向かった.
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