日記「芦」

Profanity (to the God) is the one language that all programmers understand. こじらについての考察 2010/12/20(Mon.)
果たして予知能力は存在しうるだろうか。
予感というものが頭をよぎったとしてもその場で口にする者は少なく事の成行きを
見守ってから言うのがしばしばであるから結局明らかになりにくい。鼠なんか小動物
にはそれがあると屡言うが、人間が高度技術を駆使し後にようやく知り得る情報を、
生れつきの能力で知るだけかもしれない。
 ともかく自分はあの時悪い予感がしていながらもその道に深入りしてしまった。
右も左も草むらで道は前方にしか無いように思われた。

綿貫、朝。机にノートを広げて座っていた。迷路について研究していた。
分岐する道筋を始めに決めてから書けば簡単に難しい迷路が作れるのでないかという
思い付きを明朝、夢うつつに。
道筋を線で書いた迷路に比べて壁を線で書く通常の迷路は遥かに難しくなるという
原理があるかもしれない。

誰よりも早く起きたつもりなのに家を出たのは自分が最後であった。
駅まで少し走ることにする。途中、空中に中が暗闇の穴が開いていたのを見た。
異次元に繋がっているとも考えられなくもない。幻覚だ。睡眠不足が最近ますます酷い。
睡眠の不足なんて失礼だ。
寝る時間を十分与えているのに寝てくれないのは、そっちじゃないか。
ああ、死ぬなら今か。裏から見ると穴は透けて見えた。日の光は眠気を誘い、塀の下に
座っている猫は自分の存在に気付かない。

学校の講義は先週の今日と何も変わるはずもない。話してる内容は先週と少しも変わ
らない。正直に言えばまるで自分とは性格の違う異性の者が突然話し掛けてくるのを
待っているのだと推測する。

帰宅部の一部は午前の授業を終えると部室に一旦集まる。
どうやらそこで寄り道の場所を決めてから三人ほどの小さい郡に別れて帰宅するらしい。
自分は今までに二度遭遇したことがある。一度は喫茶店と一度は古本屋。向こうは
自分の事を知る由も無いがそれでも気になり、何だか愉しめなくなり、聞こえない舌打ち
をして帰った。


昼休みに帰宅するということ

自分はこの日いつもより三時間程も早く家に帰ることにした。
この話は実を言えばただ、『電車で熱心に本を読み耽る老人がいたから、こっそり覗き込
んだら携帯電話の取扱説明書であった』という話である。

手の平に赤ペンを使ってfdmeと書く。
今日帰る途中で買う必要の物のメモである。
駅のすぐ近くに文具屋と一緒になった本屋と
角の向こうにコンビニ、その隣にスーパーが
あって学生の必要なものはおおかたこの3店で揃う。
コンビニに入り出来るだけ歩かないルートでメモ帳と飲み物を手に取る。

次は文具屋で何を買うつもりであったか、
手の平のメモを寝ぼけた頭で解読しながらレジに向かう。
丁度会計を済ませた主婦らしい人は手におそらく
隣のスーパーのと思われるレジ袋を2つ抱えて去った。
スーパーで買い物を済ませた後にコンビニで買い物を
する様子は奇妙に思われる。コンビニは商品を定価で
売り付ける所であるから。殊に文房具を文具屋で買う
のに慣れるとコンビニの価格設定が暴利に思われる。

コンビニの店員は皆どうしてこうもトーカティブ
なんだろう。じゃないと勤まらないのかもしれない。
ポイントカードの説明なんてどうでもいいし飲み物なん
だから温める必要も無いのに、一つの袋に入れるだとか
お好きにすればいいのに、千円札一枚差し出せば細か
い小銭で端数を支払うのを期待して来るし
(私の財布にはいつも小銭が入っていない。寝て起きた
らいつも消えるのだから)

例え、それが一方的でも会話を中断して割り込むのが苦
手で、結局全部終わってから先の客が足元に置き忘れた
スーパー袋を言ってやると店の者は慌てて自分が店を出るより先に出
て行った。

店員は先の客が左右どちらに行ったかさえ分からない。
右です。
私は右にある文具屋に向かう途中にある薬屋を覗く。
この人は悲しい人だ。賢明な者は買うものが軽いのか
ら済ませるだろう。
だからまず薬屋で買い物をして、それからスーパーに行く。
コンビニは高いからまず使わない。

駅前にあるもの

eは消しゴムで間違いないのだがfが分からない。
文房具の類いに決まっている。
だとしたら消しゴムと一遍に買いたい。
二回に分けてレジに行くのは何だか恥ずかしいから。
近くの木のベンチに座って少し考える。一株の木を囲むドーナツ状のベンチ。
反対側では子供二人がカードゲームをやっていて騒がしい。どうせ家で遊んで
いたら親に追い出されたに違いない。つまり、「外で遊びなさい」と。
とかく人々は騒がしく空は適度に心地よい程に曇って、木は眠れない。

どうせfは英単語の頭文字なのだが。しかし自分が買いそうなfの物は思い
付かない。
それにしても話し相手がいないというのは何と惨めであろうか。かくして惨めな
青年、自分のことなのだが、は周囲への関心が比較的少ない少年二人もが気付く
ような独り言を呟いているのだ。本人は真剣に考え事をしているだけなのだ。
しかし当然気遣う者もいない。だからせめて神とか自然を信仰する他無いじゃな
いか。今はただfを見つける事だけで幸せなのです。

意味などない。
歩いたことの無い道を歩くのが好きで、電車から毎日見ていたこの道はいつか
歩かなければいけないの、という観念はいつもあった。歩き始めて直ぐに右手に
見えるラーメン店。調度お腹も空いていた入ろうかどうしようか迷っていた。
一杯いくらくらいなのか見当が着かない店だった。
客が一人でてきた。

今年はどうも、暦を良く見るようになったので、今が夏だとは分かっているので
すが、アレらしい。そのようだ。言うまでもない、レイカだ。レイカって書くと
人の名前っぽい。
「あ、今年も来たんですね、レイカさん」
「ええ・・・。」
「久しぶりですね。三年・・・いやもしかしたら四年ぶり位じゃありませんか?」
「そうかも。」
「じゃあ今年の電器業界は大変でしょうねえ。ちゃんと備えているんでしょうかねぇ」
「さあ・・・。」
漢字を当てると冷夏。何だか涼しいじゃないか。去年は夏が来なかった。と言っても
それは私の認識世界での話。要するに夏に気づかなかったのだ。鈍感過ぎて暑いのに
も梅雨で湿めっぽいのにも、全く気づかず終わっていた。

家に着くとさっさとパソコンの黒い画面と対話し始める。自分はすることが分からず、
テレビを見ようと思ったがテレビがそもそも見当たらなかった。テレビはどこ?と聞くと
隣の部屋にあるはずだ、と。ドアを開けて確認してみる。隣の部屋は寝室であったが、
ベッドには布団もなく段ボールと共に鞄やらコートやらが散らかしてあった。
テレビは見つけられず、「片付けられないの?」と聞いてしまっても良いのだろうか、
そう言えば冗談ぽく笑い返してくれるだろうか、
しかし恐らく彼女が画面に向かう顔は無表情だろうし、一向に関心を反らさない。
何も触れないのが正解。更に「じゃあ帰るね。」だと大正解でパソコンを覗き込んで
「何やってるの?」と首を突っ込んで迷惑がられる。
「デイトレードよ。」
デイトレードを知ってはいるが聞いてみる。
「まあ小規模の株取引よ。」
「ふーん。面白いの?」
「そうね。最近は飽きてきたかも。でも簡単に大金が得られるからね」
自分は、資本主義に絶望などしていないんだ。
ただ、どうにかして彼女に大損を被らせれないかしら。

「ねえ。冷蔵庫の中、勝手に使っていい?」
「蟹以外なら全部どうぞ」
お米を研ぎ、洗い物を減らすために大きめの丸いフライパンで炊くことにする。
蓋をして弱火。その間にコーヒーカップに2つ、卵を割る。箸でかなり丁寧に解く。
5分ほど掛けた。その間こっそりガラスに写ったパソコンの画面を見ると白い画面に
なっていた。時に目が合った。
フライパンは中火にして少しだけ蓋を開けて中を覗いてしまった。フライパンの
大きさが自分がいつも使っているのよりも大きいから時間が分からない。
「フライパン、大きすぎじゃない。一人暮らしにはさ。」
「薦められたのを買ったのよ。あんまし料理しないし。」
「みたいだね。昨日は、お寿司?出前の。」
お米は完全には炊けていないが十分お米らしい匂いがしていたので妥協して、カップ
に解いた卵の約半分を米に掛ける。ウインナー、ねぎ、玉葱、ベーコン、それから
白ごま。掻き交ぜて今度は強火に掛ける。最後にウスターソースとマヨネーズを
混ぜて丁寧に炒める。コーヒーカップに残った一個分の卵には多めの砂糖とほんの
少しバター、牛乳で満たし箸でよく掻き混ぜる。蒸し器に入れて、十五分したら
止めるのだがこの間に先の料理を平らげる。炒飯と呼んでいるがまるでそれとは
似つかない料理に彼女は怪訝である。決して自慢でるおいしくもないし、栄養も
バランス悪い料理に試食した彼女の反応は第一印象と変わらない。蒸し器に掛けた
火を止めて更に10分放置する。実際一時間程放置しても構わない。テレビ配線を
さっさと完了して鑑賞を始める。

関西、ローカル放送のニュース番組には皇帝が出ている。出始めた頃はどのテレビ局
も取り上げられていたのに最近はこのニュース番組だけである。勅令が出てもこの
番組によってしか取り上げられない。
「知的生産だと、楽しいのかしら?」
「もちろん。」
と言って自分は笑った。この笑いはあの笑いと同質だ。
つまり、科学を疑う者に対してどうするように我々は教わったか。あの子は紙の上に
数式を書いて何故ボールの行方が解るのかを聞いたばつかりに鼻であしらわれた。
不運としか言いようがない。

コーヒーカップを蒸し器から取り出し、冷蔵庫に移した。
振り返るとうっすら涙を浮かべて見えたのは自分だけかも知れない。だって自分は
随分と近眼になってしまったんだもの。どっちにしたって騙されるものか。皇帝は
街灯を全て青色のLEDに至急変えるよう求めている、とテレビは伝える。
そうすべきだろうね。

「テレビ消してよ。」
「皇帝が嫌いかい?」
「消して、って」
そう言って彼女はようやく初めて席を立ちテレビに向かった。
「カラメルは好き?」
「え?何よそれ」
「カラメルも知らないの?普通プリンに掛けるでしょ?あの黒い」
「ああ、それ。それがどうしたの」
「作ろうかなあ。苦手なんだよね。そのくせ甘いだけだし。」
「カラメルって作るの?買う物だと思ってた。ねえコーヒーいれてよ。」
そう言って、また、席に着いた。
自分はキッチンに向かう途中彼女の肩に手を乗せた。正直、分からない。
コーヒーメイカーを見つけたのにコーヒー豆が見付からず初めから見つけてあった
インスタントコーヒーで諦めることにする。一杯にするか二杯にするか少し迷って
二杯にした。どうせこっちを見ていない。再び黒い画面と向かい合ってる。
「経済の動きに規則を見つけようという研究は大昔から止まないね」
と言って自分はコーヒーを左手に渡す。
「ん、え、何て言ったの?」
「うん、いや、何でもない。」
「私、文系だからよくわかんない」
ちゃんと聞こえてやがる。
聞き返すのは所詮相手を試す為なのか。どうも一部の女性はこの技術を持っている
ようだ。しかしいちいち突っ掛からずに流すのが喧嘩しないための自分の処世術。

「いやまあ、経済学なんだから文系なんだけどさ。確かに経済でもマクロだとか
 カオスだとかは少し理系の匂いがするよなあ。何学部でしたっけ?」
一口飲んで熱すぎるな、と思ったのか少し冷めるまで置いておくことにする。
「私?私は…まあいいじゃない。どうだって。本当に興味があって聞いてるの?」
「皇帝が嫌いなのは、貧乏なのに偉い身分だから?」
「そうね。それも一つ。もう一つは、皆信者みたいに支持してること。
 貴方も、何で皇帝を支持してるの?」
「自分は、支持してるのは賛成できる勅令そのものだよ。賛成できないのも
 将来無いとも限らないし、よっぽどの事が無い限り、人間そのものを支持しない。
 …信用しない。」
「私、信用されてないんだ。」
ここまで5分。コーヒーは猫舌の自分にも少し物足りない温さ。
「ねぇ、私の顔、見てよ。」
「…いい。」自分は床を見た。
彼女は鼻で笑って「いい、って何よ」と言って大声で笑った。
自分でも何やってるんだか。女に馬鹿にされに来たっていうのか。違う。
一日にして一人の優位に立つのが目的だったのだ。それがどうだ。
恐らく会った時点から自分は誰も信用しない故に誰からも信用されない小人。
怖いのは社会。
今少なくとも脅威は目の前でコーヒーを啜るこの女。

自分は勢いだけしか武器にするものがありません。
上手に使えば強い武器に成り得る、という手応えはありましたが、
「タイミングが変よ。」というのが彼女の評価でした。


BrainC

テレビを見る。もしかしたら今回のことがニュースでやってるかもとそこで
思い付いて、ニュースを見るが天気予報とアザラシのニュースしかやっていない。
仕方なく別のチャンネルに回し、動物のビデオを流しては司会やタレントが
説明して感想を言い合うだけの番組を見てみることにした。
「実にくだらないテレビだね。」と後ろから。
続けて「俗なテレビとしてはそのくらいくだらないのが実にいい。」

画面には公園の石階段で寝そべる猫が二匹。ひなたぼっこだろう。
「ぼっこ、って何なんだろう。」
 猫が鳴いた。とにかく長い声で鳴いた。あれはお腹が空いたなあ、って
言ってるんだよと、いつのまにやら透明のコップに水のように透明なお酒を
チビチビと呑んでいた。
画面には何やら文章が字幕風に映し出された。
それをじっと見ていると、何やら猫はその通りに言葉を喋ってるように聞こえる。

猫はいつだって自分の最期の場所を探している。
真っすぐに伸び、カーブでさえ大きな円の緩やかな円弧の鉄道の線路。
ここから銃を撃てば弾は線路に沿って行くに違いないという感覚

コメ(0) | トラ(0)


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