日記「芦」

姉さん、はっきり言ってくれ。おらあ、いい子だな、な、いい子だろう?(著太宰治「I can speak English」より) 9時間耐休レース 2011/1/20(Thu.)
高校生が老女に席を譲ろうとした。電車内。老女は拒んだ。遠慮しているに違いない。
押し問答に周囲が注目した。結局、高校生が「次の駅で降りますから」と言って老女は
座ることになった。私はピンと来た。この高校生は嘘をついている。
そう気づくと私は吹き出しそうになった。そして携帯を取り出してコレを書いている。

間もなくして次の駅に停車。高校生は降りる。さっきの老女が会釈したのに気づいて
慌てて高校生も返す。私は彼の後をつけるため降りた。ホームのブザーが鳴る。電車
のドアが閉まる合図。すると高校生は隣の車両にさっと入った。慌てて私も、ほとん
ど強引に自動ドアが閉まりつつある高校生が入ったのと同じ車両に入り、息を整えて
こう言った。
「君、嘘をついたね」
彼はろくな大人にならないであろう。こんな世の中だから、嘘つきでないと、人を騙す
人でないと生きられないことくらい私だって知っている。
さっきの老婦だって、きっと人を騙して生きていただろう。
しかし目の前で嘘をついた人を許すわけにはいかなかった。嘘が嘘と分かった今、彼を
非難せざるにはいかなかったのだ。
彼はきっとろくな大人になるまい。車両内のろくでもない大人たちは私を睨みつけてい
る。

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