日記「芦」

まず、自分が苦しんでいる原因がすべて自分にあることを認めることから始めてみる。 日記 - 最近思うことなど 2011/3/23(Tue.)
駅から会社までのその短い道のりの間に、太く真っ赤な線が引かれていた。
何人もこの線を乗り越えることを禁じられている。
理由はわからないが、こんな線が突如として現れ、突如として消える。
ニュースで聞いたことはあったが、まさか自分が関わるとは思わなかった。

私と同じように、その線の前で右往左往している人が大勢いた。
私と同じ会社に勤めているものだろうか。作業着に身をつつんだおじいさんも
いる。ベビーカーを引き連れた母親もいる。いろんな人が大勢いた。

私は親といっしょに暮らした20年間、親を相手に猫をかぶる術を訓練したとも
いえる。そうやって成長してきた。今こうやって困ってるではないか。

時計を見れば遅刻は必至だが、まぁ、それはどうでもよかった。後で事情を話
せば分かってくれるだろうから。
しかし、これはどうだろう。あまりに酷いではないか。

線を越える勇気がないのならば、回り道をできないものか、と考えた。
つまり、この線の両端には、そう、両端。両端があるのではないか。線を越え
ないようにしかし線に沿って歩いていけばいつか端っこにたどり着くかもしれ
ないし、もしかしたら、線は一周してあって、どこかを囲っているのかもしれ
ない。それを確認した者はいるのか。誰も言わない。

皆、何もしないでいるのだ。
ただ困惑して、誰かに電話して、結局動かないでいる。

この人達はもうあてに出来ない。
しかし私だって実際今、考えるだけで行動に移さないでいる。
だって、もうそこに会社があるのだ。無駄な体力は使いたくなかった。線は果て
まで続いて見えた。

ただの線なのである。
誰も見てやいない。
私が一歩、平然と越えて見せれば、きっと真似をするに違いないよ。
目をつむっての一歩。

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