日記「芦」

原点でいいじゃないか。それが生きるということだ(阿佐田哲也著「新麻雀放浪記」より) 社会行動論(社会心理学)に関する実験資料 2011/7/15(Fri.)
社会行動論(社会心理学)に関する実験資料

Hint:
被験者をいくつかの「実験群」と「統制群」に分ける。
実験群には何かしらの特別な手続きをして、統制群には
それをしない。実験群と統制群を比較することで、
それらしい結果をある程度、客観的に示したといえる。

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●Bruner and Goodman(1947)
硬貨の知覚
[被験者] 10歳児30人。
親の年収によって、高所得群10人、低所得群10人、
それから残り10人を統制群とする。

[手続き] 実験群には1~50セント硬貨を見せて、
その大きさを投光器で書かせた。統制群には、それぞれ
の硬貨と同じ大きさのボール紙の円を見せて、
その大きさを投光器で書かせた。

[結果] 子供達は硬貨の大きさを過大視した。
低所得群にそれは顕著であった。
過大視する割合は、「1cent<5cent<25cent>50cent」
みたいな傾向。統制群も25cent硬貨は数%過大視した
けど、他は微妙に小さくなってる。


●シェリフの自動運転に関する実験(Sherif, 1935)
[手続き] 集団に、暗室で静止している光点を観察させ
「動き出す」と教示すると自動運動が起きた。(実際
には眼自体が動いてることによる。)その移動距離を
互いの判断を聞けるようにして、繰り返し判断させる。
その後、一人にして判断させた。

[結果] 集団の判断値はある範囲の一つの値に収束した。
一人にしても、集団の収束値に近い値を答え続けた。


●ローゼンタールとジェイコブソンの実験(Rosenthal and Jacobson, 1968)
[被験者] 小学1~6年生の各学年3クラス。28名の教師。

[手続き] 学期の初めに「学習能力予測テスト」と称して知能テストを行う。
生徒のランダムに選んだ2割を実験群として、教師に「その生徒は、近い将来
知的能力が急速に伸びますよ」と告げる。また、そのことを他の者に告げたり
そのことで生徒の取り扱いを変えないように言った。
残り8割の生徒は統制群とする。
半年後、再び知能テストを行い、生徒のIQの増加を見た。

[結果] 1,2年生は実験群は統制群の2倍以上IQが増加してた。3年生以上は
ほとんど変わらなかった。

[考察] 教師は生徒に期待をしてしまう。それが生徒にとって、学習の意欲
につながった。ピグマリオン効果ってやつだ。


●ハミルトンとギフォードの実験(1976)
[被験者] 男女大学生

[手続き] 刺激文を39読んで、皆に聞かせた。
刺激文には「グループ名」「名前」「社会的行動」を含む。

「グループ名」はAとBの二つ。「社会的行動」は社会的に
望ましいか望ましくないかはっきり分かるようなものにする
例) 「Aグループのジョンは、募金に応じた。」

刺激文の内容は、
Aの望ましい行動…18
Aの望ましくない… 8
Bの望ましい行動… 9
Bの望ましくない… 4

終了後、「社会的行動」の記述文のみが異なる順序で示され
それを行った人の所属グループを思い出して回答させた。
「募金に応じたのはどっちグループの人だったっけ?」
そして両グループの印象を評定させた。

[結果] 
Aの望ましい印象…17.52
Aの望ましくない… 5.79
Bの望ましい印象… 9.48
Bの望ましくない… 6.21

[考察] 「望ましい」よりは「望ましくない」、多数集団よりは
少数集団(ここではBグループ)に印象を強く持ち、過大に結び
つけてしまった。


●ディオンたちの実験(1972)
[被験者] 男女大学生30人ずつ
[手続き] 同年齢の男子または女子の写真を三枚ずつ受け取った。
この写真の人物の外見は「魅力的」「普通」「魅力的でない」と
評定されることが予め認められている。
それぞれの写真の人物について、[結果]の表のような質問をした。
[結果] 人物評定。値が大きいほど好意的評価
───────────────────────────
 質問           魅力的  普通  でない
───────────────────────────
性格の好さ         65.39  62.42  56.31
将来の職的地位        2.25   2.02   1.70
結婚の適性          1.70   0.71   0.37
親としての適性        3.54   4.55   3.91
将来の幸福度        11.60  11.60   8.83
───────────────────────────
[考察] 「美人は性格も良い」というような美人ステレオタイプ


●スナイダーたちの実験(1977)
[被験者] 男女大学生51名ずつ

[手続き] 男子と女子を電話で会話させた。
男子には事前に電話相手だとして「美人」あるいは「平均的」な
女性の写真を与えた。会話を録音して、それを後に判定者が
分析した。また会話の後、互いに相手の印象を評定した。

[結果] 男子学生は美人条件の女子学生の印象をより好意的に
評価した。「社交的だ。ユーモアがある」とか言って。
判定者は、美人条件の女子と会話する男子学生の会話を
好ましく評価した。またその会話の女子側も好ましく評価した。

[考察] 美人ステレオタイプに基づく期待から、自分の行動
を現実にしようとしたのだろう(~ピグマリオン効果に似てる)
自己成就予言(self-fulfilling prophecy)ってやつだ。


●ダンカンの実験(1976)
[被験者] 白人大学生

[手続き] テレビ画面を通して、となりの部屋の二人の人物の
相互交渉を観察させる。実際には録画してあった映像である。
映像の中で、一方の人物Aが他方Bを軽く押した。
A, Bは白人黒人であるの4パターンの映像があって、そのどれ
か1つの映像である。
この行動について、4つの選択肢から解釈を一つ選ばせた。

[結果] 黒人の行動は攻撃的、暴力的に解釈され、白人は
非攻撃的に解釈された。黒人の行動は内的原因に、白人
の行動は外的原因に帰属せしめられた。
───────────────────────────
 行動の解釈    A/B: 白/白 白/黒 黒/白 黒/黒
───────────────────────────
ふざけてる        3   8   1   0
大袈裟にしてる      7   12   2   1
攻撃的行動        4   8   5   4
暴力的行動        2   4   24   11
───────────────────────────
[考察] 黒人は攻撃的というステレオタイプを通して、
曖昧な行動を解釈したのだろう。


●ロフタスとパーマーの実験(1974)
[被験者] 大学生101人

[手続き] 皆に自動車事故を起こす場面を含む映画を見せる。
学生51人を実験群として「車が激突(smashed)した時、車の
速度はどのくらいだった?」と聞き、残りの学生50人は
統制群として「車がぶつかった(hit)時、車の速度は~?」
と聞いた。
また1週間後にまた事故のシーンについて質問し、その中で
「ガラスの破片を見た?」と聞いた。

[結果] 
実験群…65.3km/h(平均)
統制群…54.4km/h
またガラスの破片を見たと言った人は
実験群…16人/51人
統制群…7人/50人


●ダーリーとグロスの実験(1983)
[被験者] 大学生70人

[手続き] 「教師の評価法の研究」と称して、小学校4年生の女子生徒
の家庭環境についての約4分のビデオを見せる。半分には裕福な環境
を見せ(肯定的期待の操作)、残り半分には貧しい環境を見せる(否定的
期待の操作)。
また、半分にはその生徒が面接形式の学力テストのビデオ(約12分)を
見せ、残り半分には見せない。
その子の日頃の学力を評定した。

[結果] 
行動データ(学力テストのビデオ)があった場合のみ、ステレオタイプに
沿った評定を行った。


●コレルたちの実験(Correll, Park and Judd, 2002)
武器バイアスの実験
[被験者] 大学生、女子24人、男子16人

[手続き] 「画面に登場した人物が銃を持っていた時には、
できるだけ早く相手を銃で撃つゲーム」と教示する。
登場人物は黒人または白人であり、銃を持っていないならば
携帯電話とか何か別なものを持っている。
銃を撃つなら「発射」ボタンを押し、打たないなら「発射しない」
ボタンを押させる。

80回試行して反応時間を測った。

[結果] 相手が銃を持っていた時には、白人よりも黒人に対して
反応時間が早く、銃以外の物を持っていた時には逆に反応時間
が長かった。
銃を持つ相手に対するエラーは白人に多く、持たない相手に
対するエラーは黒人に多い。
────────────
反応時間(ミリセカンド)
────────────
銃を持つ 白人 … 555ms
銃を持つ 黒人 … 545ms
持たない 白人 … 622ms
持たない 黒人 … 633ms
────────────
エラー率(%)
────────────
銃を持つ 白人 … 0.7%
銃を持つ 黒人 … 0.4%
持たない 白人 … 1.2%
持たない 黒人 … 1.4%
────────────

●アッシュの同調実験(Asch, 1951)
[被験者] 大学生50人

[手続き] 基準線分と同じ長さの線分を3本のうちから
1本を選択するという「知覚判断課題」を8人の集団
にさせる。8人の内1人は被験者で、残り7人は被験者
になりすました実験協力者。
答えは明らかにBなんだけど、被験者になりすました
実験協力者が皆Cと答えた。被験者はどう答えるか。

[結果] 約32%が多数者に同調して誤答した。


●ミルグラムの実験(Milgram, 1974)
ナチスの人らがヒトラーの命令に従ってユダヤ人大虐殺
を行ったのはどうして、という問題。

[被験者] 「記憶学習」実験の募集広告に応募してきた
エール大学近隣の市民40人

[手続き] 「単語学習における罰の効果を調べる実験」と
称して被験者に教師役をしてもらう。生徒役は被験者に
なりすました実験協力者。教師役と生徒役は別々の
部屋にある。教師役は生徒役に問題を出して間違えたら
電気ショックを生徒役に与える。実際に電気は流れてないが
被験者には本当に思わせる。生徒役は適当に演技とかも
しちゃう。

電気ショックは15Vから435Vまで徐々にあげていく。
300V以上はかなりヤバい。生命的な意味で。

生徒役はもうわざと問題に間違え続ける。悲鳴を上げまくる。
教師役の被験者がいつ実験を放棄するかを見る。

[結果] ミルグラムは、多くは150Vくらいで止めて、
1000人に1人のサディストだけが最後(435V)まで行くだろう、と
考えていたが、実際には、
最大電圧まで行ったのは26人(65%)、残りの14人(35%)も300V以上
まで行った。

[考察] ミルグラムは上の実験のソロモン・アッシュの弟子。
ミルグラムもユダヤ人でナチスから亡命してきてる。人は
個人の人格を超えて、権威への服従を示した。


●カッシンとキーケルの実験(Kassin and Kiechel, 1996)
[被験者] 男女大学生79人

[手続き] 「コンピュータを使った反応時間の実験」に二人一組で
参加させる。でも二人の内一方は実は実験協力者。事前にキーボード
のAltキーだけはプログラムが壊れるから触るな、と伝えておく。
実は実験協力者が文を読み上げて、本当の被験者がそれをコンピュータ
にキーボードで入力させる。

 実験の途中で、突然パソコンが動かなくなる。実は実験協力者が
「誤ってAltキー押したんじゃないの?!」と叱責した。
実験者は実は実験協力者に「何か見なかったか」と尋ねて、実は実験
協力者が「Altキーを押すのを見た」と虚偽目撃証言するパターンと
「何も見なかった」と言うパターン。

実験者は「自白調書」に署名するように求めた。
自白調書:主任研究所に対し、実験者の責任ではなく、被験者の責任
であることを示すもの。後に主任責任者から被験者に連絡が行くことに
なっていた。

被験者は待合室まで戻され、迷惑を被った次の被験者、実は実験協力者
に、自発的に罪を詫びるかどうかが調べられた。

[結果] 全体として69%が虚偽自白をした。
────────────────────────
             目撃無し  虚偽目撃
             速く 遅く 早く 遅く
────────────────────────
自白調書へ署名      35%  65  89 100
罪の自発的表明       0  12  44  65
罪状の自発的構成      0   0   6  35
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●フリードマンとフレイザーの現場実験 その1(1966)
[被験者] 主婦72名

[手続き] 1. 実験群には、「消費者連盟の者」と名乗って電話をかけて、
使用している日用品について調査に回答を求めた。これにはほとんど
の者が承諾した。
2. 数日後、実験群にも統制群にも「5,6人の調査員がお宅に伺って
日用品、家財道具について2,3時間かかる調査をしたい」
と電話で依頼した。これにはどれほどの承諾が得られるか。

[結果] 実験群は53%、統制群は22%
[考察] 最初に小さな依頼を受け入れると「自分は頼まれると嫌とは
言えない人間だ」と自分を認知し直してしまう。

●フリードマンとフレイザーの現場実験 その2(1966)
[被験者] カリフォルニア州の市民112名

[手続き] 1. 実験群には、各家庭に訪問して「安全運転、あるいは州の
美化の活動への協力を求めた。それはつまり、小さなステッカーを窓
や車に貼ってほしい、という活動あるいは、立法化を求める署名に
協力してもらう、というどっちか。
2. 二週間後に、また別の人が各家庭に訪問して「安全運転」と書かれた
看板を庭に立ててさせて欲しいと依頼した。どれほどが承諾してくれるか。
統制群はこの2番しかしない。

[結果] 統制群は17%
安全運転のステッカーの家庭 … 76%
安全運転/署名 … 48%
美化/ステッカー … 48%
美化/署名 … 47%

[考察] やはり最初に小さな依頼をした場合は、後で大きな依頼をしても
受け入れられやすい。それは、安全運転とは違う美化活動の依頼であって
も、ある程度、効果がある。


●チャルディニたちの現場実験(1975)
[被験者] 大学生
[手続き] 学内を歩いている学生を呼び止め
1. 「2年間に渡り、週2時間、非行少年のカウンセラーをしてほしい」と
頼んだ。これには誰も拒否した。
2. 「じゃあ、非行少年のグループを動物園に連れてくので、2時間程
手伝って欲しい」と依頼した。
実験群には1番をすっとばして2番だけやった。
2番はどれくらい承諾されるか。

[結果] 実験群50%、統制群17%
[考察] Door-in-the-face技法(譲歩的要請法)である。
依頼者が譲歩したから、被依頼者も譲歩してしまう。
二つの依頼は時間を空けずにすること。

●バーガーの現場実験(1988)
[被験者] 学祭の模擬店の客
[手続き] わざと値段を表示しないカップケーキを模擬店で売った。
お客が値段を聞いた時、以下のようにして購買率を調べた。

#実験1(景品の効果)
[実験条件] 値段は75セントだと言った。お客が迷ってる間に、
他の店員と相談して、サービスでクッキー2枚を付ける、と言った。
[統制群] 最初から、クッキー2枚とセットで75セントだと言った。

[結果] 実験群73%、統制群40%

#実験2(値引きの効果)
[実験条件] 1ドルだと答えた。お客が迷ってる間に、他の店員と
相談して、もうすぐ閉店だから75セントにする、と言った。
[統制群] 最初から75セントだと言った。

[結果] 実験群73%、統制群44%


●ランガーたちの現場実験(Langer, 1978)
[被験者] コピー機の列に並んでいた学生120名
[手続き] コピーするのに一人で待っていた学生の所に行って
「先にコピーを使わせて欲しい」と言った。但し、以下のような
3*2=6パターンのどれかの条件を付けた。
理由: アリ/無意味/ナシ
枚数: 少ない/多い

理由アリ=「急いでいるので」と付け加えた
無意味な理由=「コピーしないといけないので」と付け加えた
理由ナシ=何も付け加えない

枚数少ない=コピーする枚数が5枚である
多い=20枚

[結果] 
───────────────────
 枚数   理由:アリ 無意味 ナシ
───────────────────
 少       94   93  60
 多       42   24  24
─────────────数字は%───

[考察] 理由が付いている時、コストが低ければ、よく考えずに
(mindlessに)承諾しやすい。「要請+理由→承諾」というスクリプト
に基づいて行動しちゃったとも考えられる。


●バージたちの実験 その1(Bargh, Chen and Burrows, 1996)
特性概念のプライミング効果
[被験者] ニューヨーク大学の学生34名

[手続き] 1. 言語能力に関する2つの短い実験を続けて行う、と
伝えた。一つ目の実験として乱文構成課題:「5つの単語が
無作為な順で並んでいるのを、文法的に意味を通る順に直して
文を完成させる課題」を30題を実施した。

実はその内15題には、次のような特性にかかわる単語が含まれていた
条件A:「行儀の良さ(polite)」活性化
B:「行儀の悪さ(rude)」活性化
C: 中立条件
他の15題は全部中立的な単語

2. 1つ目の実験終了後、別の部屋で待っている実験者に渡しに
持ってこさせるが、実験者は別の参加者にずっと説明している。
この会話に割り込むまでの時間を秘かに測定する。

[結果] 
割り込むまでの時間
A:558sec、中立:519sec、B:326sec

10秒以内に割り込んだ比率
A:18%、中立:36%、B:63%

●バージたちの実験 その2(Bargh, Chen and Burrows, 1996)
[被験者] ニューヨーク大学30名
[手続き] 言語能力に関する実験と言われて、参加者は乱文構成課題
を30題やらされる。その内15題は
実験群:「老人(elderly)」ステレオタイプ活性化
統制群: 中立条件
になってる。
終了後、簡単な説明をして実験を終えた後、実験室を出てエレベータに
向かう途中の10メートルを歩くのにどのくらい時間がかかるのかを
秘かに計測した

[結果] 実験群:8.28sec、統制群:7.30sec

[考察] 意識されない形で提供された刺激に応じて、特性スキーマや
ステレオタイプが活性化して、それに応じて行動することがある。
この影響過程は自覚されておらず、ほとんど自動的だろう。


●ダイクシュテルハウスとニッペンベルグの実験(Dijksterhuis and Knippenberg, 1998)
[被験者] オランダのナイメーヘン大学の学生60名
[手続き] 参加者は互いに関連のない幾つかの予備研究に参加すると教示された。
(プライミングの操作)典型的な大学教授(または秘書)を想像して5分間、特徴を
記述した。統制群はこの手続がなかった。
一般知識尺度開発のための予備問題(雑学クイズ)42問に回答した。

[結果] 正答率は
教授群:59.5%、統制群:49.9%、秘書群:46.4%

[考察] 
ある程度、複雑な課題においても、プライミング効果が認められ
活性化された社会的ステレオタイプの内容に応じて行動が生じたのだろう。

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